最近 2 報の論文が発表されました。
1. 和文総説(細胞工学)
1 報はもう 2 週間前のことなのですが、現在の所属での和文総説が細胞工学(秀潤社)の8月号に掲載されました。
真核生物のtRNA分子擬態複合体による遺伝暗号解読機構
伊藤耕一、和田美紀、遠藤慧
細胞工学, 34 (8): 745–749. (2015)
我々の研究室の研究内容(のごく一部ではありますが…)を日本語で解説した総説論文が発表される機会はそんなに多くはないと思いますので、特に大学院進学を考えている学部生の皆さんにはちょうどよいのではないかと思います。
ところで、この細胞工学8月号ですが、偶然にも前所属の齊藤先生(と藤田先生)も寄稿されていました。研究者の世間はなんだか狭いものだなぁ、と感じました。
翻訳制御の合成生成物学
藤田祥彦、齊藤博英
細胞工学, 34 (8): 783–789. (2015)
現所属にはまだ半年ちょっとくらいですので、私のこれまでの研究成果はむしろこちらの総説で解説していただいています。是非ご覧ください。
2. 原著論文 (Nature Biotechnology)
もう 1 報は原著論文で、米国 MIT の Ron Weiss 教授らの研究グループとの共同研究の成果が Nature Biotechnology のオンライン版に公開されました。
Mammalian synthetic circuits with RNA binding proteins for RNA-only delivery.
Wroblewska, L., Kitada, T.*, Endo, K.*, Siciliano, V., Stillo, B.,
Saito, H. and Weiss, R. (*equal contribution)
私たち生き物がそもそも持っている遺伝子の仕組みや、当然それに基づいた従来の遺伝子工学では、「DNA」と「転写レベルの制御」によって遺伝子同士のネットワークが構成されています。一方、今回公開された論文は「RNA」と「翻訳レベルの制御」で同等のネットワークを再現しようという試みです。今後、特に医療などの応用分野において、高次元の遺伝子ネットワークを人為的に作成して利用することを視野に入れたときに、今回の論文のような、言わば『非組み替えRNA技術』の概念がきっとトレンドになるものだと信じています。
この論文のキーコンセプトは私が前所属の京都大学 iPS 細胞研究所に移ったときから目指していたもので、一時は自分の力だけではインパクトのある研究論文として成立させることはできないだろうとあきらめていたのですが、同様のコンセプトで研究していた米国 MIT の Ron Weiss 教授らのグループとうまくお互いに補完し合える形で共同研究を実施することができました。というわけで、この研究論文の著者の一人になれたことをとても光栄に思いますし、定期的なオンライン会議をはじめ米国の研究グループとの共同研究の過程では非常に貴重な経験をすることができました。
ところで、この論文の 2 番目の著者は MIT でポスドクをされている日本人の方なのですが、実はなんと私の学部生時代の1コ後輩でした。研究者の世間はなんだか狭いものだなぁと、つくづく感じました。
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